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幹の④-② 「善」③-②-⑳-⑧~風姿花伝 第七 別紙口伝 「秘すれば花」、その本質⑧-①-①~「芸を極める道」・その出発点⑳-①「イヨマンテの夜」 コラボレーション (上)



 投稿者  安宅 関平

 島津亜矢さんの芸は「秘すれば花」を本丸にして、内堀に「煮え花」と「お焦げ」の花を、外堀に「感賞眼」という花を配した三重構造の楽しみ方になっている。
 その内堀の「煮え花」や「お焦げ」の美しさに初めて気付いた芸として、鮮明に甦(よみがえ)ってくる歌唱がある。その歌唱について、本編を含め16編ほどに原稿を割(さ)き、その理由を洗い出し整理してみたい。

 第1話として、その芸は頗(すこぶ)る古く、今から6、7年も前のことである。それは島津亜矢さんが38歳か39歳の頃かと思われる。
NHKで放映の歌番組だった。だが、それは「歌謡コンサート」だったのか、「BS日本のうた」だったかは、定かではない。甦(よみがえ)って来るのは、あのときの歌唱の一齣(ひとこま)である。しかもそれは、前年にふとした機会であの熊本の植木町を訪ねていなければ感じられなかった感動である。

 それは、島津亜矢さんとある女性歌手とのコラボレーション歌唱である。
歌唱曲は「イヨマンテの夜」だった。
この歌唱で受けた島津亜矢さんの芸の鮮烈な印象は、いままでにないものであった。
だが、それは他人の眼からみれば、過去から見慣れた芸だといえるかも知れない。しかもどちらかと言えば、コラボよりソロが好まれやすいことから、コラボのよさは見逃しやすいこともある。
そうしたことも含めて、従来見逃していたと思われることが、その芸のなかで芸の要(かなめ)として占めていたことに、衝撃を受けたのである。この衝撃はソロでは味わえないかも知れない。
それは、見えなかったものが見えた驚きであり感動であった。
 というのは、この歌番組でのお二方による「イヨマンテの夜」の歌唱は、大声量の迫力ある歌声が楽曲にピッタリと合っていて、とても好感が持て惹き付けられたのである。
相方には若干の力みを感じられたが個性の発揮されたよい歌唱だった。島津亜矢さんは体調がいまひとつだったのか、あるいは他に要因があったのか、声質にいまひとつの冴えを欠く面がわずかばかり感じられた。そのためか、どこか緊張感を漂わせていたようにみえた。だが、いつもの自然態がうまくそれを補っているように思われた。
 歌唱は、スキャットを交互に歌うことから始まり、最初のコーラスは相方が歌う。第二のコーラスを島津亜矢さんという段取りのようだった。
その段取りどおり第二コーラス目の舞台に入った。
 そこで人に見えないものを見たのである。
それは、島津亜矢さんが待機していた舞台中央の奥に設置された階段から降りようとしたその瞬間だった。
テレビ画面は、島津亜矢さんの顔の表情を、一瞬ズームアップして映し出したのである。ただこの時、このアップはいま少し早目かと不満を感じた。何故なら、相方の素晴らしい歌唱の余韻を楽しむ間(ま)が必要だと思えたからである。ズームアップは、島津亜矢さんが階段を降りきってからでも遅くは無いように感じる場面でもあったように思われた。
にも拘らず何故今なのか、そこに不思議さを感じた。
だがここに、NHKの技術陣の凄さがある。それはこの瞬間に生じた島津亜矢さんの一瞬の美を、技術陣は見逃していなかったのである。見逃さなかったばかりか、この美を視聴者に主張したかったのであろう。
その一瞬の美とは、その顔の表情に現れた美しさである。その美しさこそが「煮え花」の美である。大写しにしたのはこの美であった。


 寒さ融け来たりし春の河原町 そなたと分かつ加茂のぬくもりの





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